ファスト映画って?
ここ最近話題になっているファスト映画問題について考えてみます。
まず、そもそもファスト映画問題とは何かというところから。以前からYouTubeなどで映画やドラマなどの映像作品の画像もしくは映像を許諾者に許可なく使って、ダイジェストを作成しアップロードされていました。YouTubeは再生回数などに応じて広告収入が入るため、これらの動画の作成者は許諾者の許可なく映像作品を二次使用して利益を得ていることになります。
2021年の6月頃にこれらファスト映画の取り締まりが厳しくなり、ついには配信者から逮捕者が出るまでに至り、これらファスト映画が話題になりました。これらの無許可のダイジェスト動画をアップしていたYouTubeのあるチャンネルの名前をとって、ファスト映画と呼ばれるようになりました(今もう消えちゃって確認できないが、そうだったはずという記憶です)。
ファスト映画の何が問題?
ファスト映画の問題って何なの?っていうところですが、ファスト映画とされているダイジェスト動画はほとんどが映像作品のストーリーをなぞって説明しています。また、その多くが作品の結末部分まで公開しています。
映画やドラマのストーリーの内容や結末をその映像を使って説明されてしまっているので、実際の作品を購入したり、視聴する行動に至らなくなってしまう可能性が出てきます。人にもよりますが、ダイジェストで見れれば満足っていう人もいますし、また、ダイジェストではなくフルで基本見たいと思っている人も結末を知らされてしまうと見る気をなくしてしまう人もいるでしょう。
そうすると、映像作品を提供している側からすると、収益を得る機会損失となってしまうということです。
映像コンテンツを提供している側が適切な収益を得られなくなると、その業界自体が衰退していってしまいますし、新たな作品が見れなくなっていってしまうこともあるので、それは僕を含めた大多数の一般視聴者にとっても不利益になりますね。
ファスト映画の問題ほんとはどのくらいあるんだろう
とまあ、ここまで書きましたがファスト映画とはほんとにどのくらい映像業界に対してダメージを与えるものなんだろう。
僕もこれまでファスト映画の動画を見たことはありますが、自分が見るケースってこんなパターンに分類できると思います。
- かつて見たことのある作品を見かけて追体験したくて見る
- 見たことないが、以前から知っててどんな内容か知りたくて見ちゃう
- 知らない映画だがサムネや見出しに引っ張られて見ちゃう
かつて見たことのある作品を見かけて追体験したくて見る
これは前にも見たことある映画で面白かったりして、追体験したくダイジェスト見ちゃうというパターンもありますし、仮に面白くなかったものも、あ~これ面白くなかったよなあと思いながらなつかしさも手伝ってぼんやり見ちゃうこともあります。
この場合、作品自体は正規の手順で一度見ているので、ファスト映画問題によるダメージには該当しないと思います。なんなら、半分忘れていたけどこれ見たことがきっかけでもう一度見ることもまれにですがあったので、収益UPにつながっているかも。
見たことないが、以前から知っててどんな内容か知りたくて見ちゃう
以前、その作品を見聞きしたことはあるが、結局見ずじまいで終わった映画でどんなんだったんだろうと思って見てみるというパターン。
この場合は本来ならお金を払って見ないといけないものですが、これで満足して終わっちゃうと正規の手段で視聴されないので、いわゆるファスト映画問題のネガティブな側面に一番該当するパターンですよね。
ただ、一つ言いたいのは、僕の場合このパターンで見ちゃう映画って恐らくファスト映画で見なかったとしても見ないだろうというレベルの興味しかないことがほとんどなので、直接その作品の機会損失に本当につながっているのかなと思うこともある。
知らない映画だがサムネや見出しに引っ張られて見ちゃう
YouTubeのサムネや見出しで、ちょっとおもしろそうとかなんだこれ?みたいなうまい内容にひっかかって見ちゃうパターン。自分の場合はこれが一番多いかもしれない。
見始めてみるとああ、この作品ねって2.のパターンになるケースもある。ただ、多くはやはり今まで見たことも聞いたこともなかったものに出くわすことが多い。こういうケースもやっぱり、ここで終わっちゃうと正規の収益につながらないので、ファスト映画問題にあたるものだと思います。
ただ、このケースも果たしてファスト映画があることで本当に機会損失になっているのだろうか。おそらくここに該当する映画はファスト映画で先に見ようが見まいが作品を見ることにはつながらなそうな。。。
自分目線のファスト映画の問題点
個人的にファスト映画の問題点は結末や一番盛り上がる部分を説明してしまっていることだと思っています。
結構、最近の自分の感覚としては予告編じゃどの映画が面白いかって全然わからなくて、あらすじを見ても全然短すぎて惹かれない。今は動画配信サイトなども含めるととてもたくさんの数の作品がどんどん生まれているというのものあるけれど、提供元の出してる情報だけだとこれだけ作品の海の中では差別化しきれていないというのが実情なんじゃないかと思う。
そういうった実情があるがゆえに、視聴者側としては有名な作品の続編やスピンオフとかでないと惹かれなかったり、有名なもしくは好きな俳優が出ているかどうかしか、見る側のチョイスとして引っかからないんじゃないだろうか。
もちろんこれだけ作品の洪水状態になると、面白い作品もちゃんとあるし、面白くない作品もある。そういう状況で一番、不幸なのはしっかり面白い作品が埋もれて日の目を見ないこと。(面白い/面白くないは個人の感覚も入ってくるので難しいところですが)
実際、ファスト映画のYouTubeチャンネルの中で結末は説明しないがある程度のところまでをダイジェストしているものがあって、そのチャンネルで紹介している作品に対しては、ああ見てみたいなと思うことが多い。ダイジェストの作り方がうまいというのもあるかもしれないが、作品の映像も見れてお話の雰囲気も伝わるので、興味を持てるようになっていて、かつ結末は明かさないので、実際の作品を見たいと思わせる作りになっている。
初めて見たときは公式が出しているダイジェストなのかと思ったくらい。こういうチャンネルも今回の問題で淘汰されてしまうかもしれないんですが、もしそれが起きちゃうと映像業界にとっては損失なんではないかと思っています。
厳しすぎない線引きをある程度明確に
この問題を機にYouTubeチャンネルの中で作品の映像などを使ったコンテンツの提供を自粛してくるものも見かけました。そのチャンネルは作品の映像を使っているが、ストーリーのダイジェストではないがその人の切り口での解説・紹介をしているものだったけど、作品のストーリーがある程度わかってしまうことと、許諾者に無断で映像を使っているという点ではファスト映画に該当する可能性があると配信元が判断しているようです。まあ、確かに。
ファスト映画に問題があるのは確かなので、ある程度規制は必要ですが、どこからが問題になるかという点はある程度の線引きを明確にしておくことも必要。
上述のように違反に抵触する恐れがあるということで、表現活動が冷え込んでしまう可能性がある。これだけ、SNSなどで個人がマスへ発信できる時代。何が違反になるかわからないので、発信活動がむやみに冷え込んでいくことは、発信側にとっても映像業界側にもマイナスなことだと思う。
先に書いたように今はただでさえ映像作品の数が増えていること、映像作品以外にもたくさんの娯楽があふれている時代なので、公式が出す宣伝情報だけでなく、公式とのしがらみのない(と思われる)口コミ情報が作品の人気を大きく左右する存在になっている。
ファスト映画問題の中で、何が著作権の侵害にあたるかという部分は意外と明確なようで明確でなく、またあらすじをどこまで書いてしまうとNGかという点も単純に線引きが難しい。逮捕者も出たことで発信者側にもそれなりの抑止力になる一方で、個人の情報発信からなる口コミが冷え込んでいってしまうかもしれない。そうなると、映像作品自体が話題にされないことで、映像業界の衰退にもつながってしまう。
明確な線引きは難しいと思うが、例えば「結末の映像や画像は使わない」とか「ネタバレなどの注意喚起を添えて語る」とか、あるいはこういう使い方はOKだよみたいな例示するとか、映像業界側もこの問題に対して、規制だけでなく適切な個人発信の推奨活動を進める姿勢も合わせて持たないと自分たちにとって危険だと思う。
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