映画レビュー「エイリアン」

エイリアン

エイリアンは自分のマイベスト3に入る好きな映画です。この映画を初めてみたのは小学生の時のゴールデン洋画劇場(土曜の21時からやっていた)でした。

この映画の中で主人公のリプリーが急に前触れもなく鼻血を出すシーンがあります。子供の頃の自分も何故か何もしないのに鼻血が出ることがちょくちょくあって、自分も初めてエイリアンを見ている最中に鼻血が出るという不思議なシンクロが起きてました。

エイリアンは1979年公開と古い作品で、数々評論等出ているので、主だった面白いところというよりは、今見た時に気づいた点などを中心に書いていきます。

ストーリー

商業用貨物船 ノストロモ号は7名の乗組員と鉱石2000万トンを積んで地球への帰路の途中だった。

ゴールドスリープ中だった乗組員が目覚めると付近に地球は見当たらなかった。船内のマザーコンピュータが特別指令のために目覚めさせたのだった。ある惑星から発信される信号をキャッチし、知性体によるものの可能性があるため探査せよとの司令だった。

惑星に着陸した船から船長のダラスと航海士のランバートとケインの3名が宇宙服を着て探索に出る。彼らは見たことのない形の巨大な建造物を見つける。中に入ると化石化した宇宙人の死骸を見つける。さらに奥に進むと無数の卵のような物体が敷き詰められていた。物体を調べていると卵が孵化して中から飛び出た生物がケインの顔に飛びつく。

ダラスらはケインを連れて船に戻るが、船内の航海士リプリーが中に入れることを拒む。規則により、異物を持ち込む場合は隔離期間を置くべきと話すリプリー。しかし、化学担当員のアッシュが直接ハッチを開けてダラスらを船内に入れる。

医務室に運ばれたケインは完全に意識を失っていた。異星生物は宇宙服のヘルメットを溶かして直接ケインの顔に張り付いていた。X線で調べると生物はケインの肺に管を通して酸素を送り込み、彼の生命を維持している。ダラスの指示でアッシュがレーザーメスを使い、生物を切り離そうとする。しかし、生物から流れ出た血液が医務室の床を溶かし穴を開ける。血液による溶解は医務室の階下の床を溶かしているところでおさまる。わずがな量でも宇宙船の床を貫通する程の強烈な酸性の血液であることがわかり、切り離すことは断念するダラスたち。

途方に暮れていると生物は自然とケインから剥がれて死んでしまう。やがて、ケインも意識を取り戻し、元気になる。

もう一度コールドスリープに入る前に食事を取る乗組員たち。しかし、突然ケインが苦しみ出し、その胸を食い破って姿形を変えた異星生物(エイリアン)が飛び出すと逃げ去ってしまう。

乗組員たちはエイリアンを捜索していると、動体探知機が船内のペット猫のジョーンズを誤検知してしまう。機関士のブレッドがジョーンズを探して単独行動を取るが、人間よりも大きなサイズに成長したエイリアンと遭遇してしまう。エイリアンの口の中からもう一つの口(インナーマウス)が飛び出し、ブレッドの頭を貫く。エイリアンは彼をそのまま通気口に連れ去る。

通気口は宇宙船のエアロックに通じているため、全ての出入り口を封鎖して、火炎放射器でエイリアンを追い立て、エアロックから船外に投棄する作戦が立てられる。

通気口にはダラスが単独で入る。無線で交信しながら、ダラスの指示でリプリーとアッシュが通気口のハッチを封鎖していく。ランバートと機関士パーカーは動体探知機でダラスとエイリアンの位置をナビゲートする。

やがてエイリアンを動体探知機が捉え、ダラスに近づいていく。しかし、探知機からエイリアンがロスト。所在が掴めなくなったエイリアンに作戦を中止しようとした矢先に突如、探知機が反応し、エイリアンがダラスに急接近。ダラスとの通信が途絶える。

パーカーが駆けつけた時にはダラスの遺体も血の跡もなく、火炎放射器だけが残されていた。

次々と仲間が犠牲になり、船長のダラスまでも失ったことで、残りの乗組員たちは冷静さを失っていく。ランバートは船を捨てて救命艇で脱出することを提案するが、リプリーは脱出艇には4人は乗れないことを告げる。

リプリーはマザーコンピュータでエイリアンへの対抗策を分析しようとするが、回答不能との結果。エイリアンについてさらに情報を求めるが特別指令937に基づき、科学担当員以外へのアクセスが禁止されていた。特別司令937を問うと、乗組員の生死は問わずエイリアンを持ち帰ることを最優先とする命令だった。

リプリーが振り返ると不敵な笑みを浮かべるアッシュがいた。アッシュはエイリアンを捕獲するために行動していたのだ。リプリーはアッシュに掴みかかり、突き飛ばす。

コンピュータルームを出ていくリプリーをアッシュが追いかけてくる。アッシュの頭部から白い液体が流れ落ちる。コンピュータルームのつかみ合いのせいか、リプリーも不意に鼻血を出す。アッシュは突然、リプリーを襲うと彼女を投げ飛ばす。気を失うリプリーにアッシュは雑誌を丸めてリプリーの口に突っ込もうとする。

駆けつけたパーカーとランバートがアッシュを止める。乱闘となり、パーカーがアッシュを殴りつけるとアッシュの首が折れて、白い血液を撒き散らして動かなくなる。アッシュは人間ではなく、アンドロイドだった。

リプリーはエイリアンの情報を引き出すため、破損したアッシュを応急処置して会話できるようにする。しかし、アッシュはエイリアンは完璧な生物であり、倒すことは不可能だと話す。さらに、リプリーらが生き残るチャンスはなく、ただ、せめて同情はすると笑う。

パーカーは火炎放射器でアッシュを焼き尽くす。リプリーは救命艇で脱出することを決断。パーカーとランバートに機関室から酸素ボンベ等物資を運ぶよう指示。リプリーは2人と別れて救命艇の準備を進める。その間、リプリーはジョーンズを見つけてケージに入れて連れ出す。

一方、作業していたランバートらの前にエイリアンが現れる。エイリアンはランバートにゆっくり近づく。パーカーは火炎放射器を撃つため、ランバートにエイリアンから離れるように伝えるが、恐怖でランバートは動けない。無線により、異変に気付いたリプリーは急ぎ彼らの元へ向かう。やむを得ずパーカーはエイリアンに飛びかかるが、エイリアンの尻尾で弾き飛ばされ、壁に叩きつけられたところを取り押さえられてしまう。エイリアンはパーカーの頭をインナーマウスで貫いて殺すと、またゆっくりランバートに近づく。

リプリーが機関室に近づくと、ランバートの悲鳴が響き、やがて静寂が訪れる。機関室を覗き込むとリプリーは変わり果てたパーカーとランバートの遺体を見つけ、恐怖に震える。

リプリーはノストロモ号の自爆装置を作動させると、救命艇に向かうが、救命艇の入り口前にエイリアンが立っていた。驚き、ジョーンズのケージを置いたまま、慌てて道を戻るリプリー。エイリアンはジョーンズのケージを見つめる。リプリーは自爆装置を解除しようとするが、制限時間を過ぎてしまい解除不能となる。決死の覚悟で救命艇への道を引き返すリプリーだが、戻った時にはエイリアンは姿を消していた。ジョーンズも無事で、ケージを掴むと急ぎ、救命艇に乗り込み、発進するとノストロモ号は大爆発を起こす。

安堵して、コールドスリープの準備を始めたリプリーの前にエイリアンが現れる。エイリアンは救命艇の中に潜んでいたのだ。リプリーは宇宙服を着て、自らをエサにしてエイリアンを救命艇のエアロックの前に誘き出す。エイリアンが近づいたタイミングでエアロックを開く。船外に吹き飛ばされるエイリアンだが、エアロックの縁を掴んで中に戻ろうとする。リプリーは銛銃でエイリアンを撃ち、ドアを閉めるが、手放した銃がハッチに引っかかる。銛が突き刺さったエイリアンは外に漂い、救命艇のバーニアの中に入る。リプリーはバーニアを全開にして、エイリアンを焼きながら完全に吹き飛ばす。

リプリーはノストロモ号の乗組員は自分以外全員死亡し、地球には6週間後に到着予定との通信を送り、ジョーンズと共にコールドスリープに入る。

SF的美術や設定

まず、語りたいのはエイリアンに出てくる宇宙船の美術やその乗組員たちの設定が秀逸である点です。

基本的にはノストロモ号や救命艇のナルキッソスは白を基調にした未来的な船内の構造になっていますが、一方で機関室など一部は工業用の工場設備のような暗く汚れた場所もあるというのが絶妙なさじ加減でデザインされています。

この時期のSFとして有名なのはスターウォーズや2001年宇宙の旅などがあります。これらの宇宙船の美術も白を基調にした綺麗な構成になっていますが、比較的全てが綺麗に作られていて、未来的な印象は強いものの、少し綺麗すぎるとも言える。

エイリアンでは綺麗な部分だけではない宇宙船の設定にしたことでリアリティを加えることに成功しています。

乗組員の設定もリアリティの点でプラスに働いている。エイリアンに登場する人物は7名のみ。彼らは宇宙飛行士であると同時に会社に雇われた労働者であることが強調されている。ボーナスのことで揉めたり、船長と言えども会社方針に忠実に行動する姿勢など、未来の話だけど現代人の延長上にいるキャラクターとして描かれているので、登場人物に共感やリアリティを持たせてます。

これらの美術や設定に一定のリアリティを持たせていることが次に話す映画全体に流れる緊張感につながっています。

映画全体に流れる緊張感

エイリアンでは全体に緊張感が貫かれています。それは単純にエイリアンが船内にいるという事実だけでなく次のような要素で保たれています。

乗組員の間の確執
冒頭で描かれる細かい幾つかのシーンでノストロモ号の船員内では独特の確執が存在していることがわかります。

同じ宇宙船の仲間として一定の協力関係であるものの、強い信頼関係で結ばれているという状況でもないことが示されます。これも現実の僕らの仕事の同僚との関係性と重なって、またリアリティに繋がっている。
例えば、映画の冒頭で描かれる、ボーナスについて揉めるパーカー&ブレットの機関士メンバーとその他の航海士の口論。ダラス船長とリプリーの間で起きる方針決定の考え方の相違。乗組員間での確執ではないが、航路を外れて地球への帰還が大幅に遅れることへの疲労感。エイリアンへの対応が後手後手になる科学担当員アッシュへのリプリーの苛立ち。などなど。

これらの船内の緊張関係がエイリアンという脅威に直面してより危機感や不安を強く観客にも感じさせている。

緊張感を醸し出す間
惑星に降り立ち、ダラスたちが正体不明の信号の発信元へ調査に向かい、戻って来るまでが静かに淡々と時間をかけて表現されています。

また、ダラスやブレッドがエイリアンに襲われるまでの描写は、何かが起こりそうな不穏な雰囲気を早くから出しながらも、実際にエイリアンが現れるまでにはたっぷりの間が置かれています。

これらの間が緊張感を強していて、加えて、映画のポスターなどに描かれる「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」というキャッチコピーで表現される宇宙という孤立空間で正体不明の生物に襲われる恐さ、心細さが強く印象づけられている。

見せすぎないことで想像力を喚起

エイリアンが実際に画面に現れるシーンは合計してもかなり短い。これは前述のエイリアンが現れるまでのゆっくりした間と比較して、実際にエイリアンが現れて襲いかかるシーンは非常に短い。

あまりに素早いので、一体何が起きたか見ている観客も認識が追いつきません。仮に、森の中で野生動物に襲われたとしたら似たような感覚になるのではないでしょうか。

素早く飛びかかってきて、腕に噛み付かれて、襲われる側が何が起きたかに気づいた時にはすでに大怪我を負わされてしまう。エイリアンの場合は大怪我では終わらずそのまま殺されてしまうけれど。

現れるまではたっぷり間があるが、現れたら姿もはっきり見えないまま殺されてしまうという存在が、一体何をされるのかを想像させて怖がらせる。見ている側の恐怖に駆られた想像力の方が実際に何かを映像で表現するより怖いものです。


自分は初めて見た時、卵から生まれたエイリアンの幼体がケインのヘルメットを破って寄生するシーンで、宇宙服のヘルメットをすごい勢いで貫いていったシーンがあったと記憶していて、非常に怖かった記憶があった。でも、その後、見返してみるとヘルメットを貫くシーンは直接は描かれていませんでした。

実際にはヘルメットに飛びついた後、医務室に運ばれるまでヘルメットの様子は一切画面に映らず、医務室で処置するシーンではすでにヘルメットを貫いているという描かれ方だった。しかし、子供の頃の自分は実際にヘルメットを貫通するシーンが記憶上で作られてしまってました。ヘルメットに飛びつくシーンも一瞬で終って次のシーンに移ってしまうので、見せすぎないことで想像力を喚起させる効果になっています。

謎めいたエイリアンの生態や出自

シリーズ一作目ということもあり、まだエイリアンがどういう生物なのか全く謎でストーリーが進みます。

人間の身体に寄生して育つというところも斬新ですが、そもそも何を目的に人を襲うのか?姿形も異様で、目はついているのか?口からもう一つ口が出てくるなど謎だらけの生態が怖さ以上に見る側を圧倒してしまう。

その他にもエイリアンの卵が発見される異星人の宇宙船内に残されていた巨大異星人の遺体が何なのか。エイリアンに寄生されて死んだだろうことはわかるが、この異星人がエイリアンを作ったのか、単純に被害者だったのか、どこでエイリアンと遭遇したのか、そもそもエイリアンはどこから来たのか。この辺りは一切謎のまま映画は終わる。(30年以上経ってプロメテウスから始まる前日譚でついに語られ始まるが、その間ずっと謎のままにされていた)
こういった謎が多い部分もとても想像力を掻き立てる絶妙な設定やほのめかし方をしていて、映画のクオリティを高める結果になっていると思います。

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